Napoleon in Egypt
#249 May 2008

ナポレオンが継承したもの: 第一次対仏大同盟の戦争

ナポレオン・ボナパルトは、歴史上もっとも偉大な軍人のひとりであるが、1803年までは将軍 (citoyen general) にすぎなかった。ナポレオンが用いた戦術は、そのルーツをフランス革命およびそれ以前の時代に見ることができる。

忘れられたナポレオン戦役
付録ゲームは、ナポレオンの中東侵攻「The Egyptian Campaign」と、1809年の第二次ロシア・スウェーデン戦争を描く「The Russo-Swedish War」の二つ。
ルールは共通で、ゲームシークエンスはアバロンヒルクラシック、ユニットはZOCなし、戦闘結果は除去か後退、勝敗は勝利ポイント方式で、それぞれのゲームは3〜5時間で終わるという。

 

エジプトのナポレオン

ナポレオンのエジプト遠征(1798年5月19日〜1799年8月22日)およびそれに続くフランス軍による占領は、奇妙な歴史的事件である。
エジプト遠征はマムルーク政権に終わりをもたらし、それまで知られていなかったエジプトをヨーロッパに知らしめ、エジプト考古学ブームを生んだ。しかし、フランス軍の目標は、中東におけるイギリス権益の妨害であり、特にインドとの連携を絶つことだった。

1798年5月、フランス総裁政府から遠征軍を与えられたナポレオン将軍は、いつもの熱心さと洗練された統御でエジプト侵攻を開始した。イギリス艦隊に知られることなく350,000名の兵をエジプトに上陸させたナポレオンは、ピラミッドの戦い(1798年7月2日)で強敵とされたマムルーク軍を破った。
しかし、英国艦隊とのナイルの海戦(同年8月1日)では、たった一日の戦闘でフランス艦隊が壊滅、侵攻早々にカイロのフランス軍は孤立してしまった。ナポレオン軍はカイロに踏み止まるが、オスマン帝国がフランスに宣戦布告を行い、四面敵に囲まれる結果になった。
ナポレオンは、その年の冬から99年春にかけてシリア地方で先制攻撃を仕掛けるが、アッカの攻略で自軍に多大な犠牲が出た。エジプト侵攻が袋小路に入ったと判断したナポレオンは、1799年8月、パリにおける政治的立場を強化するために単独でフランスに帰還してしまった。
残されたフランス軍はクレーベル将軍の指揮によって約二年間オスマントルコと戦うが、1801年8月、エジプトのフランス軍は降伏したのだった。

ナポレオン逃亡後のクレーベル将軍らの善戦は、フランス軍の強さがナポレオン一人によるものでなかったことを物語っている。数において優るオスマン帝国軍に対してフランス軍が示した、変化する状況への対応および統率と勇気は、後のヨーロッパ諸国がアジアやアフリカで戦う際のモデルとなった。
(S&T#223に関連記事があります。)

ソマリア: 今日も続く戦争
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ソマリア内戦は、シアド・バーレ政権が1991年に軍事クーデターによって転覆されてからはじまった。バーレ政権を倒した連合政体は複数に分裂、SNM(ソマリア国民運動)がソマリア北部、USC(統一ソマリア会議)が首都モガディシオとソマリア南部を支配するようになった。国連はソマリア国内の無秩序と飢餓に対して派兵と人道的支援を行ったが(1994年と1995年)、国連軍が撤退する度に内戦が復活した。

イスラム法廷会議の台頭
2000年になると、ソマリア北部の二つの地域がそれぞれソマリランドとプントランドとして独立を宣言する。国際社会はこれらの地域を独立国として認めなかったが、皮肉なことに、これらの地域はソマリアの「公式政府」が支配するソマリア南部と比較するなら、十分な政治的安定と秩序が存在していた。

一方、首都モガディシオではイスラム原理主義者のグループが台頭、1993年ごろから地方豪族も影響下に置かれるようにになった。この集団はイスラム法廷、イスラム法廷会議、ICU(イスラム法廷連合)と名前を変え、2000年には暫定政府と拮抗する軍事勢力になった (ICUはアルカイダからも支援を受けていると言われている)。
ICUとTFG(ソマリア暫定政府軍)の戦闘は2006年に頂点に達し、ICUは首都モガディシオを占領、TFGは、エチオピア国境近くのバイドアに撤退し抗戦した。
ICUはソマリアの沿岸部を占領すべく北上するが、プントランド軍と衝突したため、ICUはソマリア南部での支配地域を拡大、最盛期には、暫定連邦政府は200X100キロ四方の地域にまで押し込められた。プントランドはエチオピアに支援されていると言われ、エチオピアはアメリカの支援を受けていた。

エチオピア軍侵攻
2006年、エチオピアは暫定政府への支援をステップアップし、バイドア周辺に派兵した。秋までに5,000名のエチオピア兵士が国境もしくはソマリア領内に展開し、300〜400名がバイドアを守備していた。ICUは、「外国の侵略に対するジハード」を国民に呼びかけ、エチオピア政府は11月30日、派兵は自衛のためである、と声明を出した。
12月に入るとエチオピア軍とICUは本格的な交戦状態となり、アメリカは駆逐艦、ミサイル巡洋艦、ミニッツ級空母を展開、UICを空爆した。エチオピア軍はモガディシオを占領、暫定政府はソマリアの南半分を支配下に置く。

現在のソマリア

エチオピア軍

2007年1月22日までにエチオピア軍とICUの正規戦は終了したが、その後、首都モガディシオではイスラムゲリラによる車爆弾や待ち伏せ攻撃が行われ、散発的な戦闘が日常化している。
2007年2月からアフリカ連合の平和維持軍がモガディシオに駐留しているが十分な兵力ではなく、南アフリカ政府にはこれ以上介入する余力がない。
他のアフリカ諸国は、経済的事情やテロ組織に対する政治的懸念から、ソマリアへの軍事介入に積極的ではない。

参考リンク: 国境なき医師団 日本 「首都モガディシオに安全な場所はない」

ロシア・スウェーデン戦争

1808年2月20日、Buxhoewden将軍率いる24,000名のロシア兵がスウェーデン王国のフィンランドに侵入した。
この戦争は、ナポレオン戦争時代のヨーロッパにおいては目立たないものだが、その後二世紀のバルト海の運命を変えた。

十字軍時代のヨーロッパ軍集団
十字軍の勃興によって、ヨーロッパに新しい軍事組織 - キリスト教騎士団 - が生まれた。十字軍に起源を置く彼らは、その軍事的勇猛さ(時として残虐性)から、聖地のみならずヨーロッパ全土において、その名を残した。
ソマリア 2006-07: エチオピア軍の電撃戦

2006年の終わり、エチオピア軍はイスラム法廷連合(ICU、ソマリアのタリバン)に対し、電光石火の攻勢を仕掛けた。この攻撃を支援したのはアメリカ情報部と特殊部隊であり、後にアメリカ空海軍も支援に加わる。

2007年1月第二週までにICUは壊滅、国際的に認知されているソマリア暫定政府が政権に返り咲いた。

ソマリアの戦いは小規模だったが、Global war on Terrorを推進するアメリカにとって重要な勝利だった。1991年に政府が瓦解して以来ソマリアは無政府状態となり、1992〜94年の国連介入も役に立たなかった。国連軍が撤退して生じ権力の空白に対し、法と秩序を作ったのは、イスラム原理主義者による「イスラム法廷(後のICU)」だった。

ICUの権力拡大を喜ばないモガデシオの軍閥は、アメリカから経済援助を受け、平和復興と対テロ連合 (Alliance for the Restoration of Peace and Counter-Terrorism) を結成、この組織は2000年に誕生するソマリア暫定連邦政府とは無関係の組織だった。

2006年になると、ICUとAllianceの軍事衝突が顕著になった。ICUはイスラム世界から支持されており、ペルシャ湾周辺の国家から資金が提供されていた。
アルカイダはICUのトップレベルを訓練、兵士を派遣し、プロパガンダビデオを配信、イランは武器と軍事アドバイザーを送っていた。
エチオピアと対立するエリトリアは2,000名の兵士をICUに派遣した。その他、何千という義勇兵士がソマリアに集っていた。

イスラム法廷連合の兵士

S&T#239「Winged Horse」バリアント

65枚のエラッタ・バリアントカウンターが本号に付属している。ルールはwww.strategyandtacticspress.comからダウンロードできる。

過去のS&T
50号前#199
Forgotten Axis: Finnish Campaign

Mike Bennighofによる1941年のフィンランド・ソ連戦争。Brian Trainによる特集記事、Joseph Mirandaがバルバロッサ作戦におけるドイツ中央集団軍、Carl Schusterが第一次大戦の海上飛行革命。

100号前#149
Franco-Prussian War

普仏戦争をJoseph Miranda。このゲームは19世紀の将軍の視点から描かれ、移動力の判定にダイスを使い、戦闘結果にチットを用いている。Andrew Preziosiが植民地時代のインドにおける戦闘序列の記事。

150号前#99
Thunder at Luetzen

TSR時代のS&Tでナポレオンの1813年の戦役をBowen Simmons。コンピュータゲームの記事ではへクスのアルゴリズム、Dave Isbyがソビエトのアフガニスタン戦争の記事。
200号前#49
Frederick the Great

Frank Davisがフレデリック大王の特集記事とゲーム、Dave Isbyが南北戦争"Blue & Gray"、Outgoing Mailのコラムではマイナーなテーマのウォーゲームについての論議。

予告

#250 Red Dragon Rising: 世界覇者として台頭する近未来の中国と連合軍との戦争。
#251 Cobra: リメイク。マップ二枚で描く1944年ノルマンディ。
#252 The New Mexico Campaign: ニューメキシコで衝突する南軍と北軍。
#253 Drive on Kursk: 1943年クルスクの戦車戦。
#254 Hannibal's War: 第二次ポエニ戦争を「1066」のシステムでマルチ対戦。