Manila'45:
Stalingrad of the Pacific
#246 October 2007

Manila'45: 太平洋のスターリングラード

1945年1月9日、圧倒的な空海軍力の支援を受けたクルーがー将軍率いる第六軍がリンガエン湾に上陸することで、ダクラス.マッカーサーは「フィリピンに帰る」、という約束を果たした。アメリカ軍は内陸の日本軍を追い詰め、同月23日にはクラーク基地まで達していた。
1月30日、第八軍がマニラ湾周辺に上陸すると、太平洋戦争最大の戦闘のひとつが始まった。ドアツードアの戦い、狂信的な日本軍による最後の一兵までの死闘を経て、アメリカ軍によってフィリピン首都は解放されたのだった。

最高司令部
第八軍がマニラ市に進撃する時、マッカーサー司令部が楽観的だったのには理由があった。長期持久戦を狙う日本陸軍(山下奉文大将)が、マニラ東方の山岳地帯に移動する情報を得ていたからだった。
アメリカ軍は、マニラ市内に多数の情報源を持っていた。マニラ市街にたてこもる日本人水兵を除去することが困難である、と考えた者はアメリカ軍にいなかった。日本の陸軍と海軍が対立していることはよく知られており、水兵は歩兵の訓練を受けたことがなく、市街戦の経験もないはずだった。
数日でマニラ市を占領できると考えていたマッカーサー司令部は、市内で勝利パレードを行う計画をたてていた。

ビアフラの日没: ナイジェリア内戦 1967-70

1967年春まで、ナイジェリア連邦共和国はアフリカ大陸最大の黒人国家だった。その国土はフランス、イタリア、ベルギー、オランダをあわせた面積を持ち、50-56百万人の人口を抱えていた。国民は200以上の部族から成り、その中の三大部族、Hausa-Fulani、Yoruba、Ibo族の対立は、単一国家を形成するのに大きすぎるものだった。

ゲティスバーグ最後の戦い:

ゲティスバーグ市周辺部の戦いは1863年7月1〜3日に終わったのではない。ミード将軍とリー将軍の最後の戦いは7月14日、MarylandのFalling Watersで行われた。この戦いはリンカーンが待ち望んでいた戦争のクライマックスではなかったが、誤算と勇気、悲劇の物語となった。

メムノンの島づたい作戦: アレキサンダー大王への宣戦

マケドニア王でありコリンシアン・リーグの長であるアレキサンダーは、紀元前334年の冬、戦略的ジレンマに立たされた。グラニコス川でペルシャ帝国軍を打ち負かし(紀元前334年5月)、イオニア、フリジア、キリキア沿岸を征服したが、小アジアのペルシャ帝国軍は無傷のままだった。

アレキサンダーがギリシャを統治するには勝ち続けることが必要だった。彼は、後に「大王」と称されるものの、ギリシャ人からすれば、誇りある都市国家を武力で従属させた教養のない野蛮人だった。都市国家がアレキサンダーに忠実であるのは、そこに駐留するマケドニア兵、一部のロイヤリスト、反乱に対する厳しい処罰という脅しのおかげだった。

ギリシャの中でもっとも軍事色の強いスパルタは、いまだ占領されておらず反撃の機会を伺っていた。スパルタ王アギス一世は、アレキサンダーに戦いを挑むため、傭兵を雇う資金をペルシャ帝国から得ようとしていた。ペルシャ帝国が雇った軍人メムノンはギリシャ都市間の政治にも精通し、アレキサンダー打倒の秘策を持っていた。

ガレー船の戦い

当時の海戦の主力は「Trireme」と呼ばれるガレー船だった。「Trireme」の呼称は櫂の漕ぎ手が三層であったことに由来する。
船には貯蔵庫や居住スペースはなく、甲板は歩兵戦のために平らになっていた。乗組員は約170名の漕ぎ手と10〜14名の戦闘員、これに指揮官その他20名がすべてだった。
Triremeの攻撃力は船首の衝角と、船上の歩兵からの投石、投槍、弓矢であり、敵の船の速度が落ちると、乗り込んで白兵戦を行った。船の最大速度は時速25kmだが、時速9〜15kmで数時間巡航するのが普通だった。
当時の船はタールによる防水加工が行われていなかったので浸水があり、長距離の航海には不向きだった。メムノンが島づたいに移動しなければならなかった理由もそこにあった。Triremeは可能な限り乾かすものであり、夜になる前に接岸して船を水揚げした。冬季は乗組員を解散して給料を節約し、船を乾燥させた。

ペルシャ軍はギリシャ軍より大きなガレー船を持っていたが、ほとんどの場合、ペルシャ軍は勝つことができなかった。ガレー船の構造と構成の違いが、勝負の主たる原因だった。
ギリシャ軍の戦法は船首の衝角で敵の船にぶつかることであり、漕艇術とドクトリンは度重なる戦争で磨かれていた。ギリシャ都市のほとんどは常備艦隊を持ち、6〜10隻の編隊で訓練した。

ペルシャ帝国は常備艦隊を持たず、個々の軍艦は裕福な商人のスポンサーによって維持されていた。軍艦の目的は海賊の撃退であり、敵船に伴走しながら、投槍や投石で敵船の漕ぎ手を負傷させ、乗っ取るのが彼らの海戦だった。
個々の戦艦の性能では、ギリシャ軍よりペルシャ軍の方が優れていた。ペルシャ軍の方が速度が速く、幅広の船幅は、広いプラットフォームを船上の戦士に提供した。
ほとんどのギリシャ軍艦は編隊による漕艇の訓練を受けていたが、ペルシャ軍側は終結地点で合流するのが最初の船団の出会いであり、それゆえ単純な攻撃法しか行えなかった。ギリシャ軍は全員共通の言語-ギリシャ語-を話せたが、ペルシャ軍はフェニキア、旧ギリシャ、エジプトからの寄せ集めだった。ペルシャ海軍は広い公海での戦闘に慣れていたが、ギリシャ軍との戦いは島々に囲まれた狭い海域で行われた。


復元されたTrireme

過去のS&T
50号前#196
Vietnam Battles

Joseph Mirandaが1968年のテト攻勢とユエ・ケサン攻防の記事。付録ゲームのルールはベトコン狙撃兵から米軍ヘリコプター大隊までをカバーする。John Burttは米軍側が重大な戦術的敗北をきっしたKham Ducの包囲戦の記事、Carl Schusterはドイツ空軍の起源から終わりまでの新視点、Jim Yatesは歴史上もっとも偉大な将軍のひとりのハンニバルについて。

100号前#146
Sicily

パットンとモンゴメリーがメッシナへの道を競い合うイタリアンキャンペーンをJohn Schettlerがゲーム化。Joseph Mirandaは「Trajan」の追加記事でローマ時代の戦略と政治、Al Nofi編集のFYIでは18世紀ロシアのPugachevの反乱の記事。このトピックは#232の「Catherine the Great」で詳細に扱っている。

150号前#96
Singapore

Charles Kamps、Jon Pickens、John Pradosによる1941-42年のマレー・シンガポール作戦のゲーム。この作戦は極東における大英帝国の終わりをもたらし、今日でも機動戦の見本とされる。Charlesは「Nordkapp」のバリアント、Dave CookはTSR「Civil War」、Richard Bergはウォーゲームのレビューとデザインプロセスの記事。
200号前#46
Combined Arms

Jim DunniganとRedmond Simonsenによる「Combined Arms」は近代戦の戦術級ゲーム。Stephen B.Patrickの近代戦の記事、Dave Isbyはパトロールと近代歩兵戦術、「East Is Red」のバリアント(核兵器ルールを付け加えた)、「Starforce」のデザインノート、バックカバーは「Moves」誌の発行部数が6,000部になった広告で、Redmond Simonsenのサイン付き。

付録ゲーム

246号のゲームは「Manila'45」。アメリカ軍プレイヤーはマップ上のすべての日本軍ユニットを除去することを目的とする。DRMの修正が強力。

付録ゲームの日本語ルールはこちら--->

次号予告

付録ゲーム「Holy Roman Empire」は、ルネッサンスおよび改革の時代のヨーロッパの政争を描く。Gunpowder時代のテルシオと傭兵、軍事天才の戦い。

S&T#248付録ゲームの予告
First Blood: Second Marine, 1918年6月15日

First Blood: Second Marine(FBSM)」は、第一次大戦最後の一日を扱った戦術級のウォーゲームである。マップはドイツ軍が局地的に有利だった地域を扱い、Marine川を越えてアメリカ軍陣地を攻撃する。
ユニットサイズは分隊規模で、重機関銃は固定ユニットとして提供、1へクス100ヤード、1ターン15〜45分、第一ターンのみ早朝の視界の悪さを反映して2時間を表す。
FBSMにはターン記録マーカーがない。いずれかのプレイヤーが負けを認めた時ゲーム終了となり、ルールの難易度は「低」、プレイ時間は約2時間だという。

News <my comment>

MCS Group (http://www.mcsgroup.org/ 近代紛争研究グループ)が「Battle for Baghdad」というウォーゲームを開発中。サイトによれば、3〜6人のマルチプレイヤー、エリア方式、150枚のカウンターと150枚の戦術(?)カードによるもので、それぞれのプレイヤーが政治宗教セクトをプレイするらしい。予価$46.95で、デザイナーはJoseph Miranda。

この会社は他に、「Cauldron Iran」「Millennium Wars Advanced」「Terror Inc.」をゲームのラインアップにあげている。
「Millennium Wars Advanced」は、One Small Step社(http://www.ossgames.com/)で発売したゲームの拡張版で、中東、アジア、ヨーロッパなどの近未来の紛争を扱う戦術級。サイトによれば、紛争前の編成、戦闘、カウンターテロ、占領政策、国際政治をカバーし1へクス20km、プレイ時間12時間以上の精密ゲームだという。