Vietnam 1965 - 1975 (VG)

ベトナム戦争のすべてを表現したヘビー級ゲーム

Victory Gamesのベスト投票がYahooのメーリングリストで行われた時、(VG)Fleetシリーズ、(VG) Across 5 Aprilsと並んでダントツの人気だったのが「(VG)Vietnam 1965 - 1975」でした。このゲームはベトナム戦争の全貌を作戦級で描いたもので、その精密な描写から、同テーマの決定版と評価されています。

発売は1984 年。デザイナーはNick Karp氏。46ページにわたって記載されたルールは、ベトナム戦争全般をNLF(ベトナム解放戦線)に有利なゲームとして表現、複雑な勝利ポイントの計算とあいまって、作戦級で描いたヘビー級の戦略級ゲームにしています。
(VG)Vietnamがベトナム戦争モノの白眉であるとするなら、それはキャンペーンルール、中でも複雑かつ独創的な「人口コントロール」ルールに負うところが大きいと思います。(参照リンクS&T#239 「これは我々の戦争だ」)

人口コントロール
ベトナム戦争でアメリカが敗れた原因は、軍事よりも政治的理由によるものでした。北ベトナム政府を凌駕する経済インフラストラクチュア、工業力と人員を動員する組織力がありながらアメリカが敗北したのは、共産軍がターゲットをアメリカの政治システムに置いたからであり、ベトナム戦争が低強度紛争のはしりだったからです。

(VG)Vietnamのキャンペーンにおいては、ゲームの勝敗は"人口コントロール"、すなわち、南ベトナムの市民が、NLFとSVN(南ベトナム政府)をどれだけ支持するかで決まります。ルールでは、南ベトナム全土の総人口を360単位と設定し、SVN支持の人口が217単位から開始され、個々の戦闘結果は間接的に支持率に影響を与えるものです。

NLFへの人口支持率が増えると、アメリカ国民のベトナム戦争に対する支持が減り、軍事介入度が減少します。軍事介入度が減少すると増援できる部隊数が減り、部隊数が減ると、南ベトナムでのアメリカ軍の守りが弱くなります。 一方において、アメリカ軍が戦力にモノを言わせてNLFに過剰な攻撃を行うならアメリカ国民の反感を買い、同様に軍事介入度が減少します。これによって、アメリカ軍プレイヤーには、NLFを駆逐する十分な戦力がありながら、それを十分に駆使できないジレンマが生まれます。翌年の軍事介入度が減ることを承知の上で、VCユニットに対し強固な包囲戦を挑まなければならないターンも来るでしょう。アメリカ軍の勝利条件が厳しいと評されるこのゲームは、アメリカ軍が段階的に撤退に至る過程を数学的に表しています。

問題点
エラッタがほとんどないルールは、完成度が最初から高いものでした。(VG)Vietnamに問題点があるとすれば、マップが35の「県」に分割されていることです。それがどうして問題かというと、人口の判定を「県」ごとに行なわなければならないからです。ひとつひとつの「県」ごとに紙とエンピツでSVNの支持率を計算し記録すること、それを2ターンごとに35回繰り返すことは、人としてできる忍耐の範囲を越えています。二度参照しなければ損害が求められない面倒なCRTと相まって、人口コントロールが(VG)Vietnamをヘビー級にしていると思います。

また、Offensiveルールに回数の上限がないことも、キャンペーンルールの欠陥と言われてきました。ルール上、NLFは無制限に「テト攻勢」を仕掛けることができます。これをやるとNLFプレイヤーは有利になりすぎるので、NLFは「手加減しながらアメリカ軍と戦う」という不自然な対応を迫られることになるのです。

(VG) Vietnam for iPad
Windows版とMac版がダウンロードできる「Computer-aided CRT (VG) Vietnam」は、戦闘結果と人口コントロールを自動的に計算し記録するアプリケーションです。2011年春からは、iPad版もダウンロードできるようになりました。(VG) Vietnamをプレイされる時はお試しください。

de

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The program caluculates combat results. Replacement Points and other value above must be manually typed in.