Dagger Thrusts:
Patton & Montgomery, September 1944
#233 December 2005


Dagger Thrusts: 対ドイツ戦の失われた勝機、1944年9月

1944年夏に連合軍と交戦した時のドイツ軍は歴史上最も優れた防衛戦を行った軍隊である、という事実に異論を挟む歴史家はほとんどいないであろう。ドイツ軍の装甲車両は主要な機能において連合軍より優っていた。これらの車両の搭乗員は、それを支援する歩兵を含めて、防衛戦の名人だった。交戦において、彼らは連合軍のもっとも脆弱な部分に対して火力を集中することができた。ドイツ軍は撤退後、ほとんどの場合において直ちに連合軍に対して反撃した。そして、ノルマンジー上陸作戦から戦争の終りまで、ドイツ軍の浸透戦術は連合軍のそれを上回っていた。

それでも、連合軍は空軍および砲兵による火力においてドイツ軍を圧倒していたし、膨大な戦略物資もあった。1944年のクリスマスまでにドイツ軍は降伏すると考えられるようになると、軍司令官達は「戦勝病」、すなわち戦争終結までに自分がどれだけ功績をあげられるかを考えるようになった。問題は、伸びきった補給路のおかげで前線のすべてに十分な物資を送ることが不可能だったことであり、アイゼンハワー、パットン、モントゴメリーのいずれも誤った作戦を採用したことである。


付録ゲームDagger Thrustsは、ルールブック16ページ、176個のカウンターで、マーケットガーデン作戦がキャンセルされた場合のパットン第三軍のライン川への前進をテーマにしたハーフマップサイズのミニゲーム。ユニットの規模は師団から連隊で、最終ターンまでにライン川右岸に連合軍側の橋頭堡を築くことを目的とする。同じルールでモントゴメリーのマーケットガーデン作戦を描いたミニゲームも付属している。

For Your Information

アメリカ軍AC-130ガンシップは、1963年の東南アジアでのデビュー以来すべてのアメリカ軍特殊部隊で使われてきた。1963〜75年イラン、1980年エルサルバトル、1982〜90年グレダナ、1983年パナマ、1989年湾岸戦争、1991年ソマリア、1991〜94年ボスニア、1993〜98年ハイチ、1994年リベリア、1996年アフガニスタン、2001年から現在までイラク、などだが、今後10〜20年内のうちにAC-130はUCAV (Unmanned Combat Aerial Vehicles) と入れ替わる。


現時点で約1,000台のハンドヘルド・コンピュータ「Tacticomp」がアメリカ軍の分隊に支給されている。このPCは衛星通信機能とワイヤレスLANを装備しており、他のどのPCよりも頑丈に出来ているという。
ジョージ・ヘンリー・トマス: 合衆国の頑固者

北軍の他の司令官から「うすのろ」と揶揄されたジョージ・ヘンリー・トマス将軍は、南北戦争においてもっとも過小評価されている軍人のひとりであろう。チカモーガの戦いの防衛戦で見事な戦いぶりを示した彼は、リー将軍とへ同じようにバージニア州で生まれながらも、1861年の南北戦争勃発時に、合衆国への忠誠を示したのだった。

ナッシュビル会戦、1864年12月15〜16日

1864年のフッド(南部連合)の反撃は1864年12月、ナッシュビル郊外でジョージ・ヘンリー・トマスの率いる北軍が攻撃を仕掛けるとクライマックスを迎えた。フッドのテネシー軍は敗退し、北軍の勝利となり、南北戦争史の流れを決定づける戦いのひとつとなった。

バルジ作戦の空軍戦

1944年12月16日からはじまったバルジ作戦 (Wache am Rhein) は、地上戦についてのみ語られることが多い。悪天候が連合国空軍の出動を阻み、ドイツ地上軍の反攻を容易にした、というのが通説である。

しかし、作戦の初日から膨大な数の連合国空軍が出動しており、ほとんどの歴史家が空軍力が存在しなかったとする12月17日から22日の間でさえアルデンヌ地方に計5,000機が出動している(多くは米第9空軍によるものであった)。
一方、ドイツ軍も作戦の初日に計2,400機を出動させたが、これは1940年のフランス侵攻よりも多い数だった。

圧倒的に優勢な連合軍空軍に対抗するため、ドイツ空軍は悪天候が予想される日の前日に空襲を決行した。当時、連合国空軍はそれぞれの空襲の前日に目標を決めており、もしドイツ側の奇襲が成功したなら、翌日の連合国側空軍は、まったく見当違いの場所を攻撃すると予想された。

さらに、連合軍を欺瞞するため、ドイツ空軍の指揮官達はアメリカ第8空軍の爆撃機を空中で迎撃する戦闘システムを構築するよう指示されていた。飛行基地はアルデンヌでの地上支援に適した場所に作られず、飛行訓練も爆撃機相手の空中戦を想定したものが行われた。Wache am Rheinのプランナーは、迎撃戦闘の技術は容易に地上支援の技術に転用できると考えていた。

過去のS&T

50号前#183
Byzantium

Joseph Mirandaによるビザンチン帝国を描くマルチプレイヤーゲームはアラブ諸国の侵攻から十字軍までの数世紀を描く。Donald MackはスーダンのOmdurman戦役。John Burttはアメリカ南北戦争における機動戦。Dave Arnesonはイギリス海軍に勝利したフランス海軍提督Suffrenの物語。

150号前#133
Baton Rouge

バトンルージュ市の戦いをRichard Berg。Jupa and Dingemanのチームがイラン・イラク戦のイラク側の勝利。Al Nofiによる軍事トリビア。

150号前#83
Kaiser's Battle

Dick Rustin、Joe Balkoski、Redmond Simonsenが1918年におけるドイツ軍最後の勝利のチャンス。このテーマはSPIにおける二度目のゲーム化である。Davie Isbyが1980年代のアメリカとソビエトの海軍ドクトリンの分析。

200号前#33
Winter War

1939〜40年のフィンランドとソビエトの戦争を描いたこのゲームはS&Tクラシックと言える。J.F. Goff、Phil Orbans、Red Simonsenのデザインは、第二次大戦の勃発にまったく新しい視点を与えた。ロシアからAvalon Hill、そしてそれ以降までのウォーゲームの歴史をSteve Patric。

 

S&T 予告

S&T#234の付録ゲームは、3世紀のローマ帝国と蛮族との戦いを描く「Lest Darkness Fall」。
その他、ヨーロッパにおけるアメリカ空軍の歴史、ロクロワの戦いとスペイン軍優位の終焉、ウォーゲームの興味深い歴史、の記事を予定。

#235 Cold War Battles: 1956年ブタペストと1987年アンゴラの戦い
#236 They Died with Their Boots On, vol.1: 1775〜76年のケベックの戦い
#237 No Prisoners!: 1915〜18年のアラビアのロレンス
#238 Marlborough: スペイン継承戦争