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Cityfight: ゲームレビュー

「読んでいると深い感動を覚えるルール、やってみるとゲーム以前の代物」、それこそがSPIゲームの味わいというべきです。
SPI のゲームは面白いかどうかは二の次であり、ゲームデザイナーが歴史をどのように抽象化、数値化し、対戦できるゲームとして体系化したかを深く観賞すべきなのです。
そして「Cityfight」は、見事にその期待を裏切らないゲームです。

「Cityfight」では、サイモンセンの素晴らしいグラフィックワークによって、プレイヤーは瞬時に中世の地方都市Gerlafingenに投げ込まれます。
道路を吹き抜ける風、街路樹のざわめく音、土ぼこりの匂いまで感じるようです。1へクス進むだけでプレイヤーの感覚は兵士のように研ぎ澄まれます。街は平穏に見えても敵はどこかに潜んでいて、移動は命がけです。

フルブラインドゲームであるため、双方がルールの間違いに気がつかない懸念がありましたが、ルールは単純そのもの、バルコフスキーの抽象化の上手さに感嘆しました。
また、ブランイドサーチにありがちな、こちらが索敵をした結果その位置を敵に知られるようなこともなく、ほぼ完全な隠密移動が可能なのです。

五里霧中
問題は、隠密移動のルールが強すぎて、お互いの位置がほとんどわからないことです。大半の時間を索敵に使い、結果は往々にしてはずれ、仮に発見しても、敵ユニットは1へクスでも動くと見えなくなります。
ZOCも成立しないため、お互いが索敵しないと同じへクスをすれ違うことになります。これは1へクス = 16mであることを考えれば、ありえないことです。その結果、いつまでも戦闘がはじまらないという状態になるのです。
Consimに「Cityfightは近視の軍隊。軍用犬の方がマシ」と書いたところ、Brian Trainは「"two blindfolded boxers with earplugs in, trying to find and then hit each other."」と言っていました。

このようなプレイアビリティの問題はあるものの、バルコフスキーが表現した市街戦のルールが「深い感動を覚えるもの」であることに違いはなく、戦争の本質が隠匿と欺瞞であることをよく表しています。
PCのプログラムを書いて、お互いのユニットの位置を同時追跡するなどすれば、迫真的な戦いになると思います。
PC版「Cityfight」に興味ある方はメールください。
(2011年8月20日YSGAでT氏と対戦)