Fifth Corps (SPI)

全縦深同時制圧

SPIの近未来戦ゲームは、第三世界大戦の主戦場がフルダ渓谷である、という前提で作られていました。
フルダギャップ、ホフギャップ、第五軍団、BAORなどの単語をゲーマーに広めたのは、他ならぬSPIだったのです。

実際のところ、そこが決戦場になるというのはダニガンの想定にすぎず、幸いにして第三次世界大戦が起きなかったことから、それが正しかったかどうかは誰にもわかりません。

ひとつ言えることは、クルスクが第二次大戦前は無名だったように、第三次世界大戦は、双方が予想する戦場では始まらなかっただろう、ということです。
西側の空軍力は量質ともに東側を上回っていましたが、東側は西側空軍基地の所在をすべて把握しており(航空機の機種と数も)、戦争勃発と同時にこれら基地が叩かれることは確実でした。
NATOはまた、想定されるワルシャワ条約軍の進撃路に核地雷を敷設していましたが、ワルシャワ条約軍はその存在と位地を予測していました。従って、NATOが想定した進撃路でワルシャワ条約軍が侵攻してくる確率は低かったのです。

「5th Corps」の価値
米ソの正面戦争がありえなくなった今日、SPIの現代戦ゲームが価値を持っているとするなら、それは単にルールが革新的であったとか、コンポーネントとが美しいという理由からでなく、ルールが「当時の西側軍事プランナーが想定した戦争」という事実に基づいているからです。それゆえ、米ソ決戦が過去のものとなっても、ゲームは「現在: 1985」であり続けるのです。

(VG)Flashpoint:Golanのルールで(SPI) 5th Corpsを対戦する
アラブ対イスラエルの現代戦「(VG)Flashpoint: Golan」は、もともとは「Condition:Red」というタイトルで、NATOとワルシャワ条約軍の機甲作戦を描いたゲームとして企画されていました。しかし、ベルリンの壁崩壊によって舞台は中東に移され、1991年に「(VG) Flashpoint: Golan」として製品化されたのです。

その幻となったヨーロッパ現代戦ゲーム「Condition:Red」を再現するため、「(VG) Flashpoint」のルールで「(SPI) 5th Corps」をプレイするためのハウスルールがネットに公開されています。「(VG) Flashpoint」は1へクス4km、「(SPI) 5th Corps」も1へクス4km。「(VG) Panzer Command」の後継版として開発されていた「Condition:Red」は、既に有名だった「(SPI) 5th Corps」を十分に意識して作られていたと思われます。

 

全縦深同時制圧
戦争開始と同時に、砲兵と空軍で敵の全縦深(最前線〜後方)を同時制圧しながら、大量の戦車・機械化歩兵をFLOT(前線、Forward Line of Troops)に突進させ、敵を包囲殲滅するドクトリン。
ソビエト軍が第二次対戦前から密かに研究していた機動突破作戦で、トハチェフスキーの考案と言われる。ワルシャワ条約機構軍はこの戦法で西ヨーロッパに侵攻すると永らく言われていた。


BoardgameGeekに、「Flash Point: Golan」のルールで(SPI) Fifth Corps、(SPI) Hof Gapをプレイするルール、ConsimWorldには(SPI) BAORをプレイするハウスルールが掲載されています。
http://talk.consimworld.com/WebX?14@1001.zdp2dOmO3dd.24036611@.1dd1a64c/0

「Condition: Red」ハウスルール(作者不詳)

Dan Stueber氏によるハウスルールlのルール明確化(pdf)

ハウスルールはDan Stueberの奇襲シナリオと12時間前予告シナリオ、Brett Avantsの12時間前予告シナリオがあります。(下のマップをクリック)

 

Dan Stueber's Surprise scenario (マップをクリック)

Brett Avants' 12 hour scenario (マップをクリック)

The time is: 23 August 1985

対戦例: 2012年3月18日(日)のYSGAの例会
今回の対戦は、対戦というより実験というべきものでした。
奇襲シナリオで、プレターンも含めて4ターンプレイすることができました。

上の写真: 第一梯団 (20th GdMR) は、衝角として敵の戦線に穴を開ける役割。HSKを壊滅させた20th GdMRは、Frankfurtまで10へクスに迫っている。第二梯団 (第79戦車師団) は後方に待機して、第一梯団の攻撃が成功すれば敵後方に進出し戦果を拡大する。
第8親衛軍 (8GA) の目標は、50km先の空軍基地である。第57機械化狙撃師団 (57th GdMR) はHSKに止められた。その間にアメリカ第四機甲師団 (US 4th Mech) が前方に出て、第三機甲師団(US 3rd Armd)の右翼を守っている。

ソビエト第20機械化狙撃師団 (20th GdMR) 付近の詳細。
幅70kmで展開する米軍第三機甲師団(US 3rd Armd)が、Frankfurtへの進撃を食い止めている。

NATO軍が設けた幅4kmのKill zone (黄色いへクス)。
20th GdMRは"Out of CC"のNATO三個大隊を攻撃することをためらっている。

NATO砲兵の掩護へクス(青)。三つ以上重なり合っている部分にソビエト軍ユニットが入ると100%の損害が出る。ソビエト20th GdMRが5th Corpsの三個大隊を追撃しなかった理由はこれにある。NATOの主戦闘地域は幅50km、深さ30kmの縦深を持つ。

20th GdMRの砲撃範囲(赤)。双方の主戦闘地域は20km幅で重なり合っている。US 3rd Armdはモラルチェックというリスクをおかしながら2へクス後退した。 ソビエトプレイヤーは、NATOの防御の手薄な部分を探さなければならない。

広大だが狭い戦場。1ターンで100km (24へクス) 移動できる。電子戦はマップ全域をカバーする。

戦闘結果を計算するiPadアプリ。(VG) Flashpointと(SPI) 5th Corpsに対応している。ルール確認の手間をはぶくことができる。