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付録ゲーム「Russian Civl War」 - 仁義なき消耗戦

【YSGA例会での4人対戦】
2011年11月5日(土)のYSGA例会でS&T#267 Russian Civl Warを4人(A、B、C、Dとする)で対戦しました。

ゲームは、50枚近くある赤軍と白軍のリーダーユニットを各プレイヤーにランダムに配ることからはじまります。
各プレイヤーは自分が持つ赤軍/白軍ユニットの両方を自由に移動/戦闘させることができ、必要なら自分のコントロール下にある赤軍と白軍ユニットを戦わせることもできます。
これが、かの有名なRCWの"カオスセオリー"、すなわち、赤軍/白軍ともに内部分裂した状態で、敵対する白軍/赤軍のリーダーのすべてを完全除去することを勝利条件とする論理 = ルールなのです。
各プレイヤーは、ゲームが終わるまで赤軍/白軍のいずれ側につくかをあきらかにする必要はなく、さらに言えば、最後まで決める必要もありません。
ゲーム終了時に、赤軍か白軍いずれかの「すべてのリーダーが除去された側」のユニットを一番多く除去していたプレイヤーが自動的に勝ちとなります。

ルールは、政治委員会、暗殺、粛清、転覆活動、疫病、装甲列車、チェコ部隊、無政府主義者、皇帝ユニットなど、ロシア革命らしさを表現するものがあります。

初期配置。
ロシア中央部は赤軍が支配しているが、それぞれのユニットがABCDプレイヤーによってコントロールされているため、赤軍は内部分裂している。
中でもPetrogradとMoscowを占領しているCプレイヤーの赤軍が優位であったため、第一ターンからABD白軍がC赤軍に果敢な攻撃を行った。

【展開】
11月5日の対戦では、ランダムにユニットを配布した時点で、Cプレイヤーに赤軍が集中し、ABDはいずれも赤軍と白軍を少しずつ持っているはっきりしない状態でした。しかもCプレイヤーは単独でPetrogradとMoscowを支配していました。

RCWでは、一度転がりだした雪玉が止まることはありません。ゲームがはじまって、ABDがCの赤軍優位を崩そうとした結果、赤軍全体の凋落を誰も止められなくなりました。

第2ターン。
MoscowがD白軍とD装甲列車に占領されている。
第3ターンでは、戦力18のDポーランド軍が現れ、誰も手がつけられない状態になりました。

除去された赤軍が復活するルールが一応あるものの、それが有効なのはPetrogradとMoscowが赤軍の支配下である時で、それは最初の二時間だけでした。午後五時に5ターン目を終了した時、赤軍ユニットの8割、白軍の9割が除去され、指揮官ユニットも5枚ぐらいしか残っていませんでした。つまり、ほとんどのユニットが除去されてしまったのです。
いずれのプレイヤーも戦闘が継続できる状態とは言いがたく、ゲームが終わった時、ロシアの国土は荒廃と破壊の極致にありました。

第5ターン終了。
ほとんどのユニットが除去され、ゲームを続けられる状態ではないことがわかる写真。
この時全員ほのぼのとしてきて白軍勝利と断定しましたが、赤軍勝利にしていたら、A赤軍の単独勝利だった可能性も捨てきれません。

ゲームを通じて我々が見たものは、アメリカ独立戦争や日本の戦国時代とはまったく様相を異にする無限の消耗戦でした。政治的連帯より見敵必殺であり、白軍でも赤軍でも戦闘比1:2以下の相手は迷わず攻撃するべきゲームだったのです。どっちが勝つか最後までわからないのですから。"カオスセオリー"は、たった一枚のリーダーユニットを残すためのものでした。

よく歴史では、南のデニーキン軍、バルト三国のユデーニチ・エストニア義勇軍、シベリアのコルチャーク軍を赤軍が撃退して共産政権が誕生したように言われますが、これはソビエト政府が発表した説明にすぎません。もちろんプロパガンタにきまっています。本当はRCWのようにいずれの陣営も戦争ができない状態になっていて、その時、たまたまモスクワを占領していた赤軍の一派が新政権樹立を宣言をしただけではないかとAプレイヤーが言われましたが、その通りではないかと思わせるゲームでした。
RCWのルールは、S&T#222Ottomansに流用されたと言われています。OttomansではRCWよりもさらに複雑な政治情勢が生まれます。

今回の対戦では、スタックルールの解釈で、リーダーユニットが2枚以上スタックに含まれる場合、二枚目のリーダーの下に戦闘ユニットをぶら下げることができるかどうか議論になりました。
結局、一スタックあたりの戦闘力が低いほど戦いにバリエーションが生まれるというプレイアビリティの理由から次のようにしました。

  1. 二枚目以降のリーダーユニットの指揮値は、戦闘ユニットをスタックする時のカウント目的で使用しない (二枚目以降のリーダーユニットの指揮値はすべてゼロとみなされる)。
  2. 一枚目のリーダーユニットの指揮値でぶら下がれるユニットは戦闘ユニットに限る。
  3. 既にリーダーユニットがスタックされているスタックに対し、さらにリーダーユニットをスタックする場合は、上記のカウント外として何枚でもスタックできる(ただし、5枚スタック制限という上限のもと)。
  4. 例: 指揮値2のリーダーユニットにスタックできる戦闘ユニットの数は2枚である。この3枚スタックに指揮値1のリーダーユニットを追加でスタックすることはできるが、それによってスタックできる戦闘ユニットの数がさらに1増えることはない。この場合、さらにもう一枚のリーダーユニットをスタックして、3枚のリーダーユニットと2枚の戦闘ユニットのスタックとすることができる。

最後に、対戦いただいたF、N、Mさん、ありがとうございました。

【ソロプレイ】
マルチゲームのRCWには、ソロゲーム用の特別ルールが用意されています。
ソロプレイでは政治ルールが省かれ、赤軍と白軍の軍事的衝突のゲームに仕上っています。プレイヤーは赤軍を受け持ち、ルールによって規定された方法で、白軍を移動して赤軍に戦闘を仕掛けます。


ユニットの配置はマルチゲームと同じ

興味深いのは、白軍の自動移動手順が、マルチゲームにおけるゲームデザイナーの意図を色濃く反映していると思われる点です。
ソロゲームでは、すべての白軍ユニットは、最強のスタックを作りながら、最短距離でPetrogradかMoscowをめざし移動することになっています。その結果、第一ターンで白軍ユニットの8割以上がPetrogradとMoscowに侵入します。
移動の途上に赤軍ユニットと遭遇した場合、白軍は赤軍スタックの中から最弱なものに攻撃を仕掛けます(MUST ATTACK)。これはマルチゲームにおける必勝法なのです。
2時間ぐらいでプレイできるソロゲームは、対戦前のルール研究にも向いています。