BAOR the thin red line
in the 1980's by Charles T.Kamps,Jr. |
(S&T#88「BAOR」の後編) (前編に戻る) ライン軍団 1975年の防衛白書によって、BAORは機甲師団四個(以前の編成より小規模な師団)と旅団規模の増援の野戦軍に再編成された。戦力増強のためとして発表される再編成は、実態は形を変えた経費節約であり、武器スケールは拡大してもマンパワーは増えなかった。近年において、いくつかの大隊では第四中隊が事実上、基幹人員レベルにまで削減され、これはベトナム戦争時代のヨーロッパ・アメリカ軍の「管理部の溜り場」を想起させるものだった。 戦時、BAORは120,000名まで増強される。増援はテリトルアル陸軍から召集され、人員の欠損、様々な補給能力、本国の常備軍、予備役大隊に充当される。第五野戦軍が編成され、第七野戦軍が増援の主力として作られる。各機甲師団は、軽歩兵大隊(後方警戒のため)および対戦車セクションの予備役大隊によって補強される。 19世紀の志願兵ムーブメントの自然の成り行きとして、テリトルアル陸軍は、歩兵大隊38個、装甲車連隊2個、砲兵野戦連隊2個、防空連隊3個、その他の部隊の規模を持つ。アメリカの州兵と似た形で運用され、BAORの主要な増援要員であり、本国の守りでもある。平時のBAORは弱い存在であり、予備役と現地の支援に大きく依存する。支援がなければBAORは数日しか行動できない。 政治的には、NATO軍は西ドイツにおいて前方防御(forward defense)をしなければならず、これはドイツ政府の意向に沿っている。しかし軍事的には、BAORの戦術部隊
- イギリス第一軍団(British I Corps) - にとっては、次の理由から不幸なことである。 戦闘時の編成
戦闘グループは、最近まで戦隊司令部(task group hq)と呼称されていた中間司令部(intermediate headquarters)によって統御される。"旅団"という用語が、このひとつ星指令レベルを示すため復活している。旅団は2~3の戦闘グループを統率し、それぞれの戦闘グループは、師団近接支援連隊のSP105mmアボット榴弾砲(6両)、もしくは全般支援連隊のSP155mm砲(8門)の支援を受ける。師団司令部は、充当された陸軍航空連隊および偵察連隊の中級偵察スコードロン(中隊)二個をコントロールする。 |
防衛ドクトリン 戦闘防衛計画は、三つのフェーズから成る:
上記に連携して、次の三つの防衛体勢が用いられる。
実際には、三つの防衛体勢のすべてがソビエト軍の攻勢に対して必要である。 戦闘中のBAOR 掩護部隊(covering force)の任務は積極的遅延であり、敵偵察部隊の破壊、敵行動の監視、可能な限りの遅延、を行なう。掩護部隊は戦車と敵を"狙撃"する偵察車両から構成される。工兵支援は、緊急地雷原の敷設に用いられ、歩兵が捜索と装甲援護という限定的目的で随伴する。 主防衛戦が行なわれるのは、FEBAの真後ろである。この地域は前方防御区域(forward defense area)と呼ばれ、区域の各師団への割り当ては、軍団阻止計画に基づく。各師団は予備軍を展開し、前方防御区域を突破するソビエト軍に備える。軍団級予備軍は、敵の主突破が判明してから投入する。その目的は敵の浸透の阻止と破壊であり、味方師団がオーバーランされることを防ぐ。 |
反撃 反撃突入は、敵脅威下にある防衛線のバックアップのため、縦深のある予備軍の配置を必要とする。本質的に、反撃突入を行なう部隊は、攻勢に転じて敵を追尾するのではなく、防衛線の延長として拠点を占領し、可能なら陣地化する。いずれの場合でも、最大限の砲兵の投入が必要であり、司令官は味方部隊に近接する、あるいは直上の砲爆撃をためらってはいけない。師団司令官は、残存する最後の予備軍、武装ヘリを投入し、突破部隊を全面的に支援する。武装ヘリは天候および視認性を考慮しなければならないが、固定翼機による作戦ではこの点を無視できる。 警戒と特殊作戦 各師団には、後方警戒のための歩兵隊もしくは偵察部隊が追加されることがある。師団級の警戒任務は、司令部および破壊活動の対象となる橋などの重要施設の防衛である。さらに、警戒部隊は、補給路を確保し、師団後方の重要地域を占領する。 軍団後方の警戒は、一個もしくは複数の野戦軍の任務である。師団と同様、軍団級警戒部隊は、補給路、重要施設、司令部および地域を哨戒する。野戦軍はまた、軍団司令下の空中機動用の予備軍であり、BAORの後方連絡線を守るため、補給車列のエスコートも行なう。 第二次大戦後の西ヨーロッパの都市部の発達は、攻撃と防衛にさらなる問題を与えた。ソビエト軍のドクトリンでは、先鋒部隊は主要都市を迂回して進撃する。迂回路がなかったり、NATO守備隊が十分な強さの歩哨線を張る場合、ソビエト軍は一個師団を都市正面の2~4km幅に展開し、一日あたりの侵攻速度を5kmに落とす。 森林地帯においても歩兵は中心的な部隊であり、装甲の支援を受けながら機動戦を行なう。森におけるイギリス軍歩兵の第一の任務は、待ち伏せと主要幹線のコントロールである。都市部での防衛と同様、イギリス軍が頼みの綱としているのは、ソビエト軍における局地的な歩兵不足、およびギリギリの状況になるまで歩兵を降車させない彼らの習性、である。開けた農村部では、村の拠点が相互に支援することが、防衛上の観点からもっとも望ましいと考えられている。 イギリス軍もソビエト軍も、24時間の休みない戦闘を想定している。両陣営とも、夜間に再編成と再補充を行なうが、イギリス軍は、敵の連隊級夜間攻撃にも備えている。さらにイギリス軍は、敵の侵攻開始に伴う激しい電子戦も想定している。BAORの対電子戦部隊は、第十四通信連隊であり、電子偵察とジャミングで軍団を支援する。ソビエト軍の化学戦の脅威はマニュアル化されている。イギリス軍は反撃用の化学兵器を装備していないものの、西ドイツ軍を除く他のどのNATO軍よりも、対化学戦に備えている。 結論 |
幻の"セントラルフロント"。BAORの守備位置はライン川の200km東である。 |