Korean War (VG)

軍事的勝利が戦争の勝利とならなかった最初の近代戦

「Korean War」は、1950年の北朝鮮軍の攻勢から、仁川上陸、中共軍の介入を経て、戦線が停滞する51年5月までの1年間を扱った作戦級ゲームです。デザイナーはJoseph M. Balkoski氏で、SPIでは「Atlantic Wall」、「Wacht Am Rhein」、「City Fight」をデザイン。VGではFleetシリーズや「Omaha Beachhead」を手がけています。

コンポーネント:
スケールは1ターン=1ヵ月、マップ=2枚、1ヘクス=12Km、1ユニット=師団(連隊にブレイクダウン可能)となっており、基本的なシステムは、同氏の「St.Lo(West End社)」から引用しているようです。500個以上のカウンターのほとんどは情報表示もしくはステップロス用であり、実際にマップに置かれるのは双方それぞれ50個ぐらいです。

St. Lo (1986)
ノルマンディー戦役中盤、7月11日から18日までの要衝St.Loを巡るドイツ軍(第352師団、第3降下猟兵師団)と米(第2,29,35師団)との戦いをテーマにした傑作作戦戦術級ゲーム。スケールは1ターン:1日、1ヘクス:280メートル、1ユニット:大隊/中隊を表しており、カウンター数は約400個、マップはフルマップ1枚と手頃なサイズに収まっています。アクションポイント制、支援部隊の処理方等、Balkoski氏が翌年デザインしたVG 「Omaha Beachhead」と共通するコンセプトが有ります。

Omaha Beachhead (1987)
5万分の1の当時の米陸軍軍事地図をもとにしたマップで、D−DAY当日からの10日間の激戦を扱う。独特のイニシャチブルール、ドイツ軍の増援はランダム、シナリオ3つが付属。

 

特色:
このゲームでは、各プレーヤーは、ダイスの目と修正値によっていくつのユニットが移動・攻撃ができるかを決定します。このプロセスを双方、動かすユニットがなくなるまで繰り返すのです。
その他、兵站ユニットが有する補給ポイントの消費により補給レベルを決定し、兵站の位置や距離等によって受給状態が変化する補給ルール、装甲部隊はアセットと呼ばれる補助部隊扱いとし、歩兵師団等の親部隊がなければ戦闘や移動を行えない一方、戦闘の際には有利なダイス修整をもたらす機甲戦闘ルール等々、朝鮮戦争の雰囲気を出すルールが盛り込まれています。

政治ルール:
上級ルールでは、中国軍の介入と、Global Tension Level (国際緊張度)が登場します。これは朝鮮戦争のエスカレーションが国際政治にもたらす影響をシュミレートしたもので、米軍が限度を越えた戦闘をするとポイントが上昇します。一定のポイントを越えると第三次世界大戦が勃発したことになり、国連軍プレイヤーは自動的に敗北となる為、米軍プレイヤーは「国際緊張度」を低く抑えながら戦わなければなりません。 事実、アメリカ軍が軍事的勝利をおさめることができなかったのは、朝鮮戦争の勝利が第三次世界大戦の引き金になる可能性があったからでした。

問題点:
デザイナーズ・ノートには、「朝鮮戦争は、軍事的優位がかならずしも戦争の勝利とならない最初の近代戦であり、『アメリカ軍のジレンマ』を表現する上で、政治ルール導入は欠かせないものであった。このゲームは、当時と同じ国際情勢の制約のもとで、アメリカ軍が勝利できるかを検証することにある。」と書かれています。
しかしながら、北朝鮮軍側は最初から仁川上陸が予想でき、同様に、国連軍側も中国軍の介入が予想できてしまうのです。すなわち、朝鮮戦争のターニングポイントとなった二つのイベントは、ゲームをはじめる前から双方のプレイヤーには周知の事実なのです。もちろん、歴史という結果が出ている以上、戦略的奇襲効果をルールに盛り込むことはどんなゲームデザイナーにとっても困難なことなのですが。

総合評価:
シナリオは上級ゲームルールでマップ2枚を使用するキャンペーン・シナリオの他、基本ルールでプレイできるシナリオが5本収録されています。アメリカ人のサイトでは、インタラクティブな戦闘システムが高く評価されているので、「やってみて面白いゲーム」であることは間違いないようです。