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計算されたリスク: コルウェジ救出作戦

(この記事はS&Tの翻訳とは微妙に異なります。)

歴史
1960年のベルギーからのコンゴ独立紛争の中で、カタンガ地域はコンゴ民主共和国とは別の独立国家を宣言したが、コバルトなどの豊富なレアメタルを産出するカタンガの独立はコンゴ政府の認めるところではなく、軍事紛争によってコンゴ国内のカタンガ独立派は壊滅し、独立派兵士は隣国アンゴラに逃れた。

当時ポルトガル領だったアンゴラは、1961年より国家独立の覇権めぐってMPLA(アンゴラ解放人民運動)、UNITA(アンゴラ前面独立民族同盟)、FNLA (アンゴラ国民解放戦線)が三つ巴の内戦を行なっており、しかもそれぞれのグループに米、ソ、中国、キューバ、コンゴが各々の立場から軍事支援するという代理戦争の舞台となっていた。

アンゴラに逃れたカタンガ独立派は、最初はポルトガルの傭兵となったが、MPLAがアンゴラ国内の大半を掌握する頃にはMPLAの傭兵になっていた。カタンガ兵がMPLAと連携した理由は、政治的イデオロギーによるものよりも、むしろコンゴ政府がMPLAと対立するFNLAを軍事支援していたという理由からだった。
1975年、NPLAが事実上アンゴラの政権を握ると、カタンガ兵はアンゴラ政府の軍事支援を受けてコンゴ領内に侵攻作戦を展開した。これが第一次および第二次シャバ紛争である。

第二次シャバ紛争
カタンガ兵2,000名(4,000名という説もある)から成る「Tiger」部隊の目標は、コルヴェジの占領だった。コルヴェジは、コバルトを産出するだけでなく、主要な鉄道網の中心であり、農産物の交易中心地でもあった。

1978年5月13日未明、最新兵器で武装し、行き届いた訓練を受けていた「Tiger」部隊は同地域のコンゴ守備隊を即座に撃退し、コンゴ政府協力者の逮捕と殺害、市内の略奪をはじめた。コルウェジの炭鉱会社で働く2,500名のヨーロッパ人も監禁された。

ベルギー、フランス、アメリカの三カ国がザイール支援を表明したが、モブツ(コンゴ大統領)の過去の残虐行為から、国際社会にはカタンガ独立派に同情的な声もおきた。

はじめに、旧宗主国のベルギー政府が空挺コマンドをザイールに派遣したが、これは政治交渉のための派兵であり、交戦するつもりがまったくない部隊だった。そしてアメリカ大統領ジミー・カーターが米第82空挺師団の派遣を検討している間に、ザイール政府の情報部は、カタンガ兵がヨーロッパ人捕虜を処刑し、カタンガ州をアンゴラに領有する計画を持っていることを無線傍受によって知った。

これにより、アメリカとフランスが直接的な軍事介入を行なうことが決定し、インドシナ戦争、アルジェリア戦争、チャド、ジブチ共和国で戦った精鋭、第2外人落下傘連隊(2nd REP)の4個中隊がアメリカ空軍機で投入されることになった。

コルウェジ救出作戦 (Leopard作戦)
1978年5月19日から8日間続いた戦闘によって、ヨーロッパ人捕虜のほとんどは救出され、カタンガ兵はコルウェジから駆逐された。Philippe Erulin中佐率いる2nd REP4個中隊の損害は数名の死亡と数十名の負傷という寡少なものであり、少数の空挺部隊によって数に優る敵を潰走させた本作戦は大勝利であった。アンゴラ政府はザイールと和平協定を結び、カタンガ独立派への支援を行なわないことを約束、カタンガ州の独立運動はその力を失うことになった。

「Tiger」部隊がコルヴェジを占領できたのは、同部隊が十分にトレーニングされたものであり、アンゴラ政府が最新の武器を供与したからだった。しかもコルヴェジのコンゴ守備隊は錬度が低かった。しかし、「Tiger」部隊の軍事的失敗は、コルヴェジ占領後に、さらにコンゴ領内に進攻するか、あるいはコルヴェジを強固な防衛拠点とするために各種施設を建造し陣地化すべきところを、コルヴェジの略奪と市民殺害に時間を浪費したことである。

一方、2nd REPは、奇襲のモーメンタム(慣性、力、リズム)を最大限に利用し、作戦に成功した。2nd REは降下と同時に数ヶ所の軍事目標を同時に攻撃したが、予備部隊をまったく持たないこの攻撃は、「Tiger」部隊に有効な反撃ができた場合は甚大な損害を被ったと思われる。用法が困難と言われる空挺作戦のメリットが機能した作戦である。

映画「コルヴェジに降りた外人部隊 La Legion saute sur Kolwezi」
コルウェジ救出作戦の翌年、この作戦はジュリアーノ・ジェンマ、ジャック・ペラン出演で映画化されている。邦題は「レッドベレー 史上最強の傭兵部隊」。監督はあのラウール・クタール (「勝手にしやがれ」「女と男のいる舗道」などの撮影で有名)。フランス軍がエキストラ出演し、ギアナ、コルシカ島、トゥールーズで撮影されたらしい。

レッド・ベレー/史上最強の傭兵部隊(1979)
OPERATION LEOPARD 上映時間 100分
製作国 フランス/イタリア 劇場未公開・ビデオ発売
監督: ラウール・クタール Raoul Coutard
製作: ジョルジュ・ドゥ・ボールガール Georges de Beauregard
原作: ピエール・サージェント
脚本: アンドレ・G・ブルネラン Andre G. Brunelin
撮影: ジョルジュ・リロン Georges Liron
音楽: セルジュ・フランクリン Serge Franklin
 
出演: ジュリアーノ・ジェンマ Giuliano Gemma
   ジャック・ペラン Jacques Perrin
   ブルーノ・クレメル Bruno Cremer
   ミムジー・ファーマー Mimsy Farmer