「Suez '56」
「Suez '56」は、イギリスとフランスの連合軍が行った11月5日のスエズ運河北端の都市「Port Said」への上陸作戦を6ターン(2日間)で描いたミニゲームです。

1956年、エジプト大統領ナセルがスエズ運河の国有化した動きに対し、イギリス、フランスはイスラエルを巻き込んで第二次中東戦争(スエズ動乱)を勃発させました。戦争は1956年10月29日のイスラエルによるシナイ半島への奇襲からはじまり、10月31日のイギリス・フランスによるエジプト空軍基地の空襲によって、エジプト軍は制空権を失います。
エジプト軍が シナイ半島左岸に防衛撤退し、補給の切れたイスラエル軍と対峙している最中の11月5日、イギリス・フランス連合軍はエジプト軍背後のPort Said(ゲームマップ)に上陸作戦を決行、二日間で同地域を制圧しました。

予定では、連合軍はスエズ運河沿いに120キロ南まで下り、スエズ運河を完全制圧することで、ナセル大統領を失脚に追い込むはずでした。そして、エジプト軍にはイスラエル・イギリス・フランス連合軍を撃退するだけの戦力はなかったのです。ところが、ナセル大統領にとって幸運なことに、この作戦は、直ちにアメリカ、ソビエトから帝国主義的であると抗議され11月6日に中止、スエズ運河はエジプトの領有であることが国際的に認められました。
この事件は、ヨーロッパ諸国がもはや世界のスーパーパワーでないことを象徴するもので、ナセル大統領を(自分では勝っていないのだけれども)アラブのヒーローにしました。
ゲームには、上陸、空挺ルールが設けられ(と言っても、決められた範囲にユニットを置くだけ) 、海ヘックスを横断するルールもあります。
連合軍プレイヤーはゲームターンを12ターンまで延長することができ、延長した場合、7ターン(11月7日)以降は、国際世論の圧力を表すため、各ターンのはじめにダイスを振り、出た目の数に応じてエジプト軍プレヤーは勝利ポイントを得ることができます。

海と陸地が複雑に交じり合っている。エジプト軍側が好きにユニットを配置した後、イギリス・フランス軍が上陸作戦と空挺作戦で攻撃を行い、マップ右端への脱出を目指す。雑誌には、どの位置にどの部隊が上陸したかの図解がある。

「El Arish '67」
第三次中東戦争(1967年)における、シナイ半島中部のEl Arishにおけるイスラエル軍の侵攻を11ターンでシュミレート。
1953年の第二次中東戦争は、イスラエル軍に機械化の重要性を認識させる戦いでした。このエジプトとの戦争において、戦車は縦深がある砂漠への奇襲を行う上で、歩兵の戦闘支援車両以上のものであり、イスラエル軍が求める短期戦と電撃戦に最適であることが判明したのです。 その結果、イスラエル軍は戦車部隊を次の戦争の中心に据え、72時間補給なしで戦闘が継続できるようにしました。迅速な判断のために、戦車指揮官は戦闘中もコマンダーハッチから頭を露出することが義務づけられ、数において優るエジプト、シリア戦車部隊を撃滅するために、砲弾の早撃ちと正確な長距離射撃さえも練習しました。また、戦場での決定をより下位の指揮官に委譲にすることで、司令部と前線との情報伝達のタイムラグを減らし、柔軟かつ迅速なカウンターアタックを可能にしたのです。

そして1967年6月、エジプト、シリア等による攻撃を察知したイスラエルは、軍事ドクトリン通りの先制攻撃をエジプト、シリア、イラク、ヨルダンに行い、戦争はわずか6日間で、イスラエルの圧倒的勝利のうちに終わりました。
史実では、シナイ半島に展開していたエジプト軍は壊走していますが、実際にはイスラエルに対して強力な反撃ができるだけのプランと兵力があったのです。このゲームでは、エジプト軍将校が戦意を失わなかった時の「もし」を描いています。
ゲームでは、イスラエル西側の国境付近をあらわすマップに、エジプト軍のみが初期配置を行い、イスラエル軍はターン1において、マップ東側からユニットを登場させます。
勝敗は勝利ポイント制です。興味深いのは、双方のユニットが除去されるたびに除去した側が1〜4ポイント得られる、という普通のルールに加え、特定のユニットがマップに投入されると、相手側の軍が2〜10ポイントの勝利ポンイトが得られるルールがあることです。たとえば、イスラエル軍が一個連隊の空挺部隊をマップ上に登場させると、エジプト軍は自動的に10勝利ポンイトを得ます。一方、エジプト軍の第四機甲師団揮下のユニットがマップに登場する度に、イスラエル軍は5勝利ポイントを得ることができます。勝利ポイントの差が5ポイント以下の場合は、引き分けです。

ほとんどが砂漠のマップ。Tと書かれているへックスがTal師団の侵入ヘックス。Yは、Yoffe師団の侵入ヘックス。