戻る

「1918」 デザイナー ノート

Joseph Miranda

S&T#223付録の「1918」は、S&T#180「Reinforce the Right」、S&T#204「Twilight of the Habsburgs」に次ぐ、第一次大戦を扱った三作目のシュミレーションゲームである。「1918」では、大戦後期の特徴である浸透作戦、戦車、空軍力を表現するためルールを多少変更した。

第一次大戦をゲーム化する時の問題のひとつは、塹壕線による膠着状態である。しかし、膠着状態によって機動作戦ができない、というイメージは、第一次大戦に対するステレオタイプにすぎず、正しくない。詳細に見るなら、この戦争においてたくさんの機動作戦が試みられていることがわかる。

最初に「Reinforce the Right」をデザインした時も、この問題につきあたった。「Reinforce the Right」は、1914年の西部戦線における最初の数週間を扱っている。当時、各国のほとんどの軍は、機動戦について訓練を受けていた。言うまでもなく、ドイツ軍はSchlieffenプランに基づいて、ベルギーを通過してパリ郊外の連合軍を包囲してから攻勢に出て、敵を壊滅する予定であった。イギリス軍もまた、ボーア戦争の教訓から機動戦を用意していた。フランス軍でさえ、北アフリカにおける戦役によって機動戦が何であるか十分に経験していた。そこで問題は、なぜこれらの陸軍による戦いが、膠着状態として行き詰まったか、である。

膠着状態は、少なくとも西部戦線においては、部隊の密度が原因になっている。スペースに対する人間の密度が極めて高いので、戦線を突破することができないのである。相手方の予備軍の存在も、機動作戦を困難にしている。

もうひとつの原因は、補給である。軍は、徒歩の速度でしか移動できなかった。ほとんどの補給は鉄道を通して行われ、それは迅速であったが、補給物資は鉄道末端の操車場に積まれ、そこから先は馬車の隊列が物資を運搬していた。補給手段を機械化する試みは、特にイギリス軍とアメリカ軍で行われたが、1914〜18年の軍の能力には限界があった。

そして最後の原因は、指揮系統である。当時の無線や電話によるコミュニケーションは、戦闘によって容易に支障をきたし、指揮官と隷下の部隊を分断した。これらの問題にもかかわらず、機動戦は第一次大戦において可能であった。1914年の戦役、東部戦線、中東、1918年の西部戦線などにおいて、その試みはなされている。

機動戦を訓練した指揮官と部隊による攻撃は、状況が利するなら十分効果的であった。それはしばしば、敵の戦線の間隙をつくことであったり、奇襲やリーダーシップによるものである。1916年のロシア戦線におけるBrusilov攻勢は、その例である。Brusilov将軍は、奇襲とすばやい機動によって敵の中央軍を打破した。その後の戦場においても、様々な浸透作戦や戦車による攻撃を見ることができる。

これらの理由から、第一次大戦のゲームにおいても機動戦は可能なのだが、ゲーム化する場合、第二次大戦のゲームのような移動のやりやすさをプレイヤーに提供するべきではない。第一次大戦のゲームでは、プレイヤーはもっと考えなければならないのである。

シミュレーションのアプローチ
「Reinforce the Right」において、私はダブルインパルス・システムを採用した。簡単に言えば、それぞれのプレイヤーは、一回一ターンの中で移動と戦闘を繰り返すことができ、その間、相手方プレイヤーは待たなければならない、ということである。これによって、最初のインパルスで敵の前線に穴をあけ、それに続くインパルスで戦果を拡大することができる。この数十年間、ダブルインパルス・システムは、近代戦を扱うゲームではスタンダードになっている。おそらく、最初にこのシステムを用いたのは、1969年の「Barbarossa(SPI)」だが、デザイナーの意図とは異なり、移動->戦闘->移動でターンが終わってしまい、二回目の攻撃ができない。(その後の多くのゲームでは、機械化ユニットだけが二次攻撃できることが多い。)

私は、「Reinforce the Right」において、両方のプレイヤーに二度の移動と攻撃の機会を与えたかった。これは、まるで、第一次大戦の軍隊の方が第二次大戦の軍隊よりもフレキシブルであるかのようで、あまりに寛大すぎると思う人がいるかもしれない。しかしながら、それは正しくない。というのは、このゲームにおいて、二次インパルスを行うための厳しい前提条件、すなわち、"in command(指揮系統下)"というルールを設定しているからである。味方司令部のユニットの一定の半径内に存在しない部隊は、二次インパルス攻撃ができない。そして、この「指令半径」は、けして大きくはない。さらに、司令部ユニットは、味方兵站(貯蔵所)まで連続したヘックスでつながっていなければならない。これらの条件を正しく設定しないと、大きな戦闘結果を得ることができないのである。第一次大戦における実際の問題は、敵の前線を突破することではなく、突破した後の戦場の優位を維持することだった。それゆえ、このゲームにおいて司令部ユニットが指揮系統と兵站の最先端の拠点となるようデザインしている。

網の目のような指揮系統や情報のファクターは第一次大戦の特徴であるが、それを表現するために特別なルールを作ったり、システムを複雑化することは避けた。ダブルインパルス・システムですべてを表現したのだ。ユニットが"in command (指揮下)"である時、迅速な移動が出来、部隊の力を最大限発揮できる。なぜなら、指揮下にあることで、部隊は情報を処理することができ、効果的に命令を受け取ることができるからである。その結果、命令と行動という反復サイクルが短くなるのだ。行動している部隊が指揮系統からはずれると、その部隊の侵攻速度は極端に落ちる。第一次大戦であることを反映して、指揮半径は2ヘックス以下とした。

ルールの細部に潜むトリック
このゲームには、補給システムは存在しない。補給システムは、指揮系統ルールの中に含まれている。指揮系統から外れたユニットは補給が途絶えたとみなされ、このユニットが攻撃を行うと1ターンに一度の移動と攻撃しかできない。すなわち、指揮系統下にあるユニットと比べて、半分の力しか発揮できないのである。
一方、指揮系統下から外れたユニットが攻撃を受け、退却を余儀なくされると、敵のZOCを通過することでそのユニットは消滅する。砲兵も、膨大な補給を必要とする理由から、指揮系統下にない場合、能力が制限される。

ZOCによるコントロールは強力で堅固だが、比較的柔軟性のある戦術を反映するために絶対的にはしていない。「Reinforce the Right」と異なり「1918」では戦闘後の前進が可能である。なぜなら、第一次大戦の終盤では、戦術が進歩しているからだ。

戦闘結果表には、攻撃の目的や度合いに応じてProbe、Assault、Infiltrationの三つがある。注意しなければらないのは、攻撃によっては、戦力比が低い戦闘(例: 1対1)を何度か行う方が、戦力比が高い戦闘(例: 7対1、7が攻撃側)を一度行うより、自軍の損害が少なくなることである。
例えば、BBの戦闘結果において、7対1の方が1対1よりも攻撃側の損害が大きい。これは、攻撃に係わる部隊の数が多いほど損害が多くなる、という理由からである。この理由から、戦力比を高めたい場合、砲兵や空軍力を併用する方が地上ユニットの損害が少なくて済む。AXやDPによる攻撃側のロスは、第一次大戦が消耗戦であることを表している。すなわち、戦闘に勝利しても、何らかの消耗がある、ということである。

もうひとつ注意して欲しいのは、彼我の戦力比とは無関係に、常に攻撃側は"No Effect (効果なし)"、もしくはユニットの損失を被る可能性がある、ということである。これは、攻勢において、どのような歩兵部隊でも不可避的に戦闘力を消耗し消費することを表している。この消耗は戦闘結果とは無関係に生ずるものである。したがって、プレイヤーは、統計的に発生するユニットの消耗を計算に入れなければならない。

空軍力は、歴史的文脈として、すなわち、時には戦闘に役立つものであるとしても、それ自体は決定的な力を持たないものとして現している。両プレイヤーは複数の空軍ユニットを持つ。それらは、マップに配置することによって空軍力の「傘」を地上ユニットに提供し、戦力比に良い結果を与えたり、敵のユニットを動けなくしたりする。敵と味方の空軍ユニットの影響力が重なるヘックスが生じた場合、そのヘックスにおいて、双方の影響力は相殺される。空軍のルールは、心理的な影響をシュミレートしたもので、それ以上のものではない。空軍はしばしば敵の作戦を停止させるが、物理的ダメージはほとんど与えられない。
(戦闘序列の章は省略)

戦略と戦術
司令部ユニットの扱いが、ゲームの鍵である。プレイヤーは、軍団(Corp)単位でなはく、軍(Army)単位で移動を考えるべきである。どのターンにどの軍団がどこに移動できるかを計算し、それに基づいて作戦を計画するべきである。当然ながら、ユニットは可能な限り自軍の指揮系統下に置くほうが良い。指揮系統から外れる移動と攻撃を行うとするなら、最後の決定的な攻撃において行われるべきである。

敵ユニットを包囲することも大切である。退却しなければならなくなった場合、そのユニットは壊滅するからである。また、包囲されたユニットは、指揮系統が断絶し各種の支障をきたす。
攻撃を行う場合、第一インパルスに第二インパルスをつなげて戦果を拡大するべきである。攻撃ユニットの後ろに予備部隊を配置することも重要である。なぜなら、戦線に穴を開けた後で敵の背後に浸透するのは、しばしばこれらのユニットだからである。戦闘結果によっては、ユニットが「指揮系統外」になる場合があるので、その意味においても、攻勢において、予備部隊の配置は重要である。

防御する側は、何重にもユニットを配置し、敵の浸透を防ぐべきである。その場合、最前面のユニットは戦闘力の弱いユニットで、背後のユニットを強力にしておく方が効果的である。

砲兵のルールはシンプルでありながらも、巧妙な戦術が可能である。例えば、攻勢において、敵の砲兵を叩くことは十分に価値あることである(ルールに忠実に従えば可能である)。目的は、敵の砲兵を指揮系統から外すことであり、これによって敵は防衛のための砲撃ができなくなる。

勝利条件をよく読み、それにもとづいて戦略をたてるべきである。連合軍は守っているだけでポイントが得られる。一方、ドイツ軍は激しく攻めないと勝利できない。ドイツ軍が最後の勝利をかけた攻勢を描いているゲームだからである。

追加
「1918」の追加ユニットがS&T#244に付属している。同号のバリアントによって、プレイヤーは1918年11月までプレイできる。また、戦車旅団と空軍を含む、アメリカ遠征軍のすべてのユニットが付属している。バリアントには、第一次大戦が1919年まで続いた場合のシナリオも含まれ、イギリス戦車軍団(Gen.Fuller)、アメリカ空挺師団(Gen. Billy Mitchellが似たものを発案していた)、赤衛兵(Red Guards)とドイツ義勇軍(Freikorps)が登場する。