戻る

"Ottomans"
単純な塗りわけのできない勢力図

「Ottomans」は、比較的単純なルールによって、複雑な政治情勢が作られるゲームです。
このゲームの特色は、他のプレイヤーのユニットも政治的に支配しているなら自分のユニットとして動かせることです。

敵側のユニットをコントロールするルールと言えば、SPI「ロシア革命」のような黒幕ルールを連想しますが、「Ottomans」では自分以外の国の黒幕になって勝つことは勝利条件的にありえません。そもそも、歴史上、オスマン帝国とカトリックを操作した黒幕など存在しないのです。
Ottomansのルールのユニークな点は、政治的支配と軍事的支配の二重構造を作りだしたことです。その結果、他のゲームでは見られない固定的かつ混沌とした情勢ができあがり、軍事的勝利だけを求めるゲームでなくなったのです。

「Ottomans」では、軍事的に支配しながらも政治的な支配ができていない国が生まれます。これに民族的な一致・不一致の条件が加わります。ゲームが進むにつれて、政治的には自国領だが民族的に不一致な国が生まれ、その国を他国が軍事的に占領すると、情勢はさらに複雑になります。

g

マップを見ても、誰がどこを支配しているか、どこからどこに移動できるか、かなり頭を使う必要が出てきます。オプションルールの「植民地化」を加えるとユニットの色すら当てにできなくなり、本当に見間違いが生じます。そして、皆、わかっているはずのルールを間違えます。

今回のプレイで、たとば都市Trebizondは、もともとはオスマン帝国が植民地化したロシア領でありながら(シナリオ2の初期設定)、第一ターンでロシアが軍事的に占領し、第二ターンでロシアが再植民地化まで行い、にもかかわらず政治的には依然オスマン帝国のものであるという歴史が生まれました。
あるいは、第一ターンで、オスマン帝国プレイヤーが、戦争によって都市Hungaryからカトリック国プレイヤーを除去したにもかかわらず(軍事的勝利)、政治的勝利を得なかったので、Hungaryおよびその周辺都市は依然、カトリック国側のユニットを生産することができました。それゆえ、Hungaryを占領したオスマン帝国ユニットは撤退しなければならなかったのです。
ゲームを進めるにつれ、攻勢をかけたプレイヤーは、軍事的占領は短期的な勝利にすぎないことがわかってきます。それはちょうど、イラクを占領したアメリカ軍のようなものです。あるいは1930年代に中国を占領した日本軍です。われわれは、ゲームが終わってからお互いに質問したのです、「一体どうやって勝つんだ?」
政治と軍事の二重構造は、やってみないとわからないほど面白いものです。革新的なゲームシステムに関心があるなら経験する価値があります。

g

Hungaryを占領したオスマン帝国。信じられないことに、三人のオスマン軍の指揮官が平地に出ている。これらの指揮官はカトリック国軍から狙い撃ちされ、一名が戦死した。

第三ターンになるとStratagemチットの数が不足するなど、ルールは荒削りの感があります(これをMirandaに質問した人がいて、彼の答えは「Belisariusか何かのStragagemチットをたくさん混ぜればよい。」でした)。

ユニットの所属がはっきりするよう、色付の補助マーカーを用意する方がいいと思います。ゲームの面白さを味わうためには、オプションルールの「略奪」「植民地化」は必須です。
今回、YSGAの第243回定例会で4人集まり、10時から8時までほとんど休憩なしで対戦しました。夜まで、ものすごい緊張感が続きました。マルチゲームにありがちなパスが誰のターンにもなかったのでたいへんでしたね。遊んで頂いたU氏、M氏、A氏、Y氏ありがとうございました。